介護事業者経営支援介護関連情報
介護事業者経営支援介護関連情報4

その他の介護情報 OTHER CARE INFORMATION

平成24年度介護報酬改定の概要

平成24年1月25日、平成24年4月からの介護報酬の改定について第88回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され次のとおりとなりました。

Ⅰ 基本的な考え方

改定率について平成24年度の介護報酬改定は、平成23年6月に成立した「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の施行に伴う新たな介護サービス等への対応、診療報酬との同時改定に伴う医療と介護の機能分化・連携の強化などへの対応が求められます。
また「社会保障・税一体改革成案」の確実な実施に向けた最初の第一歩であり、「2025年(平成37年)のあるべき医療・介護の姿」を念頭におくことが必要です。
こうした状況や、介護職員の処遇改善の確保、賃金、物価の下落傾向、介護事業者の経営状況、地域包括ケアの推進等を踏まえ、全体で1.2%の介護報酬改定を行うものです。
(参考)

介護報酬改定率 1.2%(うち、在宅分1.0%、施設分0.2%)

 

Ⅱ 各サービスの報酬・基準見直しの内容

1.介護職員の処遇改善等に関する見直し

(1)介護職員の処遇改善に関する見直し

平成27年3月31日までの間、介護職員処遇改善加算を創設する。なお、平成27年4月1日以降については、次期介護報酬改定において、各サービスの基本サービス費において適切に評価を行うものとします。

介護職員処遇改善加算(Ⅰ)(新規)所定単位数にサービス別加算率を乗じた単位数で算定
介護職員処遇改善加算(Ⅱ)(新規)介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の90/100
介護職員処遇改善加算(Ⅲ)(新規)介護職員処遇改善加算(Ⅰ)の80/100

 
<サービス別加算率>

サービス 加算率
(介護予防)訪問介護 4.0%
(介護予防)訪問入浴介護 1.8%
(介護予防)通所介護 1.9%
(介護予防)通所リハビリテーション 1.7%
(介護予防)短期入所生活介護 2.5%
(介護予防)短期入所療養介護(老健) 1.5%
(介護予防)短期入所療養介護(病院等) 1.1%
(介護予防)特定施設入居者生活介護 3.0%
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 4.0%
夜間対応型訪問介護 4.0%
(介護予防)認知症対応型通所介護 2.9%
(介護予防)小規模多機能型居宅介護 4.2%
(介護予防)認知症対応型共同生活介護 3.9%
地域密着型特定施設入居者生活介護 3.0%
地域密着型介護老人福祉施設 2.5%
複合型サービス 4.2%
介護老人福祉施設 2.5%
介護老人保健施設 1.5%
介護療養型医療施設 1.1%

(注1)所定単位数は、基本サービス費に各種加算減算を加えた総単位数とし、当該加算は区分支給限度基準額の算定対象から除外する。

(注2)(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、(介護予防)居宅

療養管理指導、(介護予防)福祉用具貸与並びに居宅介護支援及び介護予防支援は算定対象外とする。
 

(2)地域区分の見直し

国家公務員の地域手当に準じ、地域割りの区分を7区分に見直すとともに、適用地域、上乗せ割合について見直しを行います。
また、適用地域について、国の官署が所在しない地域等においては、診療報酬における地域加算の対象地域の設定の考え方を踏襲する見直しを行います。さらに、介護事業経営実態調査の結果等を踏まえて、サービス毎の人件費割合についても見直しを行います。なお、報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、平成26年度末までの経過措置等を設定します。

<地域区分ごとの上乗せ割合>

特別区 15%
特甲地 10%
甲地 6%
乙地 5%
その他 0%
1級地 18%
2級地 15%
3級地 12%
4級地 10%
5級地 6%
6級地 3%
その他 0%

<人件費割合>

訪問看護(55%) ⇒  訪問看護(70%)
(新規)        定期巡回・随時対応型訪問介護看護(70%)
(新規)        複合型サービス(55%)

 
<介護報酬1単位当たりの単価の見直しの全体像と見直し後の単価>
【現行】       (単位円)

特別区 特甲地 甲地 乙地 その他
上乗せ割合 15% 10% 6% 5% 0%
人件費割合 70% 11.05 10.70 10.42 10.35 10
55% 10.83 10.55 10.33 10.28 10
45% 10.68 10.45 10.27 10.23 10

【見直し後】

1級地 2級地 3級地 4級地 5級地 6級地 その他
上乗せ割合 18% 15% 12% 10% 6% 3% 0%
人件費割合 70% 11.26 11.05 10.84 10.70 10.42 10.21 10
55% 10.99 10.83 10.66 10.55 10.33 10.17 10
45% 10.81 10.68 10.54 10.45 10.27 10.14 10

 <神奈川県の場合>     変更なし

区分 現行 経過措置
(平成24年度~平成26年度)
  上乗せ率(%)   上乗せ率(%) 増減
横浜市 特甲地 10 3級地 12
川崎市 特甲地 10 3級地 12
相模原市 乙地 5 5級地 6
横須賀市 特甲地 10 4級地 10  
横須賀市 特甲地 10 4級地 10  
鎌倉市 特甲地 10 2級地 15
逗子市 甲地 6 5級地 6  
三浦市 乙地 5 6級地 3
葉山市 甲地 6 5級地 6  
厚木市 乙地 5 5級地 6
大和市 乙地 5 5級地 6
海老名市 乙地 5 5級地 6
座間市 乙地 5 5級地 6
綾瀬市 乙地 5 5級地 6
愛川市 その他 0 6級地 3
清川市 その他 0 6級地 3
藤沢市 乙地 5 5級地 6
茅ヶ崎市 乙地 5 5級地 6
寒川市 乙地 5 5級地 6
平塚市 乙地 5 5級地 6
秦野市 その他 0 6級地 3
伊勢原市 乙地 5 5級地 6
大磯市 その他 0 その他 0  
二宮市 その他 0 6級地 3
南足柄市 その他 0 その他 0  
中井市 その他 0 6級地 3
大井市 その他 0 6級地 3
松田市 その他 0 その他 0  
山北市 その他 0 6級地 3
開城市 その他 0 その他 0  
小田原市 乙地 5 6級地 3
箱根市 その他 0 6級地 3
真鶴市 その他 0 その他 0  
湯河原市 その他 0 その他 0  

サービス1単位当たりの単価の見直し

 
地域区分変更後の各市町村別等級

2012年介護保険法 同時改定はこうなる!その2 – 訪問看護

訪問看護

訪問看護の見通しは、10月17日の給付費分科会で厚労省案が示されました。居宅で医療必要度の高い要介護者が増えている現状に即して、きめ細かく対応する方針です。(以下の図3を参照)

 
その一つが、短時間かつ複数回の訪問看護ニーズに応えるというものです。現行の訪問看護の報酬上の時間区分は30分未満、30分以上1時間未満、1時間半未満の30分区切りが基本です。20分未満の報酬も存在しますが、算定できるのは日中の訪問にプラスして夜間や深夜、早朝にサービスを提供した場合に限られています。厚労省案では、これを改め、日中だけ20分未満の短時間訪問を行った際も算定可能としました。
ただし、単純に日中の短時間訪問を認めると、短時間サービスだけを実施する事業所が現れる可能性があります。これを防ぐため、週1回以上は20分以上の訪問を実施することを要件化し、かつ24時間の訪問看護体制を整えた事業所のみ、算定可能とする方針です。介護保険制度改正で2012年度から、一定の研修を受けた介護職員らによる喀痰吸引などの実施が認められるが、適切に行われているかを訪問看護の看護職員が適宜チェックすることなども期待できます。
 

短時間の訪問をより高く評価

また、厚労省案では、短時間の訪問看護をより高く評価するとしました。全国訪問看護事業協会の調査で一つのケアに要する時間はおおむね20分以内と判明したことや、訪問時間が長くなるほど移動時間や看護業務以外の間接業務の割合が小さく効率化が図れているにもかかわらず、10分当りの単価は長時間の方が高い現状を踏まえたものです。介護業務は訪問介護職員に任せ、訪問介護職員は訪問看護業務に集中してほしいとのメッセージが読み取れます。だが、分科会の委員から「慎重な検討が必要」との意見が出て継続審議となりました。
 
さらに、重症者に対して積極的にケアを実施している訪問看護ステーションを評価するため、厚労省はターミナルケア加算の算定要件を緩和する方向です。
現在、死亡日の前日から14日以内に訪問看護を2回以上実施した場合に2000単位が算定できます。しかし、「医療機関から退院してターミナルケアを引き受けて一生懸命実施しても、利用者がすぐ無くなった場合、加算が算定できないケースがある」(日本看護協会常任理事の斎藤訓子氏)。そこで」算定要件を、「死亡日を含む14日以内に2日以上サービスを提供した場合」に改めます。
 

同時改定で医療と整合性図る

医療報酬と介護報酬の同時改定であるため、医療封建と介護保険の整合性を図ることも厚労省は重視。「医療保険と介護保険で報酬単価や算定要件などがばらばらで分かりにくい」(全国訪問看護事業協会常務理事の上野圭子氏)などという現場の声に応えます。
具体的には、看護報酬に「退院時共同指導加算」を新設する方針です。現在、診療報酬には、患者が退院する前に在宅で訪問看護を行う看護職員と病院の医者や看護職員が共同で、在宅療養上、必要な事項の説明や指導をした場合に算定できる「退院時共同指導料」が設定されています。しかし、介護報酬にはないため加算を新設します。
特別な管理が必要間患者を看る場合の加算としては、診療報酬では重症者管理加算(2500円)、介護報酬では特別管理加算(250単位)がそれぞれ存在します。しかし、特別管理加算の対象者には在宅患者点滴注射指導管理を受けている者が含まれていないため、加算します。さらに、医療保険では重症者管理加算の対象者のうち、在宅悪性腫瘍患者指導管理、在宅気管切開患者指導管理が必要な患者、気管カニューレ、留置カテーテルを挿入している患者は高い報酬単位(5000円)であるため、介護保険もこれに合わせます。
このほか、訪問介護との整合性を図るため、初めて訪問した場合の手間を評価した「初回加算」を新設します。
 
訪問看護ステーションから理学療法士(PT)などが訪問して実施するリハビリ(訪問看護7,30分未満の場合425単位)も、利用実態や訪問リハビリとの整合性を勘案して見直す見込みです。現在、30分未満と30分以上60分未満の30分区切りだが、訪問リハビリと同じ20分区切りとし、20分以上、40分以上、60分以上の3区分とします。その上で、訪問リハビリ(1回20分以上で305単位)と同様に、実施回数の上限を週120分までとします。
気になるのは、時間区分や算定上限を訪問リハビリと合わせるなら、報酬も同じになるのか、つまり報酬単位を引き下げるのかという点だが、これは実現しない可能性が高いです。医療機関などから直接スタッフが出向く訪問リハビリとは異なり、訪問看護7の報酬には訪問看護ステーションの維持・管理コストも含まれているため、報酬単価に格差があって当然との考え方があるためです。

2012年介護保険法 同時改定はこうなる!その2 – 訪問系サービス

介護報酬:生活援助の45分化で報酬引き下げか リハビリ職とサ責の連携を加算で評価

訪問介護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護

厚労省が10月17日の給付費分科会で示した訪問介護の基準・報酬の素案には、利用者の自立支援の強化とサービス提供責任者(サ責)の評価や基準の見直しが盛り込まれます。
その内容は、

  • ①生活援助の時間区分の見直し
  • ②リハビリテーション専門職との連携を加算で評価
  • ③2級ヘルパーのサ責への減算要件
  • ④サ責の配置数を利用者数に応じた基準に見直しーの4点

このうちが利用者の自立支援、はサ責の評価・基準の見直しに当たります。

 

 

生活援助中心だと減収に?

は、現在は60分で区切っている生活援助(30分以上60分未満が1回229単位、60分以上が291単位)のサービス時間を45分単位に区切り直すもの。厚労省の調査によれば、生活援助のうち、利用頻度の高い掃除、調理などの平均所要時間は、サービスの準備時間(6分)含めても30~40分程度が中心。二つの行為を組み合わせた場合でも、組み合わせによっては45分未満で収まることから見直しを図るとしました。

 

報酬単価は、時間区分が従来の4分の3になるため、その分、引き下げられる公算が大きいです。生活援助を主体とする訪問介護事業者は、利用者数を増やすなどの対策を迫られるでしょう。また、自給(60分)契約のパート職員を45分泰で効率的に訪問させるには、勤務シフトの工夫も必要になりそうです。
なお、身体介護に続いて生活援助を行う場合(30分以上60分未満が83単位、60分以上90分未満が166単位、90分以上が249単位)についても、厚労省は[必要な見直しを行う]としています。
ただし、こちらについては[それほど大きく手直しする必要はないのでは](老健局振興課)との考えです。

 

生活援助の45分化は従来は生活援助を介護保険の給付対象から切り離すための地ならしと見ることも出来ます。厚労省が推し進める[地域包括ケアシステム]の下地となった[地域包括ケア研究会]の報告書は、これまで訪問介護が担ってきた調理などの生活援助サービスは、特に軽度者に対しては給付を縮小、あるいは保険から外す方向性を示唆しているからです。

 

は、サ責と作業療法士(OT)などのリハビリ専門職が3ヶ月に1回以上、利用者宅を訪問して生活機能向上の視点からアクセスメントやモニタリングを行い、それを基にさ責が訪問介護計画書を作成した場合を評価するもの。加算として新設される可能性が高いです。
リハビリ専門職が利用者の能力(各種運動能力や残存能力、改善可能性など)を見極め、生活行為の障害要因を把握した上で計画を立案するとしています。リハビリ専門職は医療機関や介護老人保健施設の職員だけではなく、一般の介護事業者の職員もよいです。

 

具体的なサービス内容としては、バランス能力や歩行能力を高める体操や転倒予防の声かけ、起床の際の移乗介助、トイレ誘導などが想定されています。サ責は、実際にこれらのサービスを提供するヘルパーとの間で、定期カンファレンスを通して情報を共有するとしています。

 

2級ヘルパーのサ責は廃止へ

はサ責の質の向上を図るため、3年以上の経験を有する2級ヘルパーのサ責の任用要件を段階的に廃止するもの。当初3年間(2012~2014年度)は2級ヘルパーのサ責を1人以上抱える事業所の訪問介護の基本報酬をい10%減算します。
そのサ責の担当利用者に限って適用するのではなく、事業所全体の報酬を減算する点に注意が必要です。厚労省は2015年度以降の3年は[10%+a]を減算(減算率は2015年度改定で検討)し、2018年度以降は要件そのものを廃止、つまり2級ヘルパーのサ責は認めなくするとしています。

 

過去にヘルパー3級の要件を廃止した際には、当初3年間は10%の減算、次の3年間は30%の減算を実施。9年目以降は、既に従事していた者に対して1年間の経過措置を設けた上で要件を廃止しました。2級ヘルパーのサ責の廃止も、この手法を参考にする可能性があります。
厚労省によれば、2級ヘルパーのサ責は約9000人で全体の18%を占めます。これらのサ責を抱える事業所は、サ責に介護福祉の資格を取られるか、新たに介護福祉のサ責を雇用するなどの対策を迫られます。

 
はサ責の配置数を、サービス提供時間またはヘルパー数の要件から、利用者に応じた形に見直すものです。現在のサ責の担当利用者数を見ると、86%が40人未満であることと、現行の[サービス提供時間450時間につき1人]を利用者1人当りのサービス提供時間(13.3時間)で割ると約34人になることなどから、利用者40人程度につきサ責1人にしてはどうかとしています。
これについては、全国ホームヘルパー協議会が2008年11月末に[一定数の実利用者数ごとに(サ責)1人とすべき]との要望書を出しており、現場の声を反映した見直しといえます。

 

24時間サービスは包括報酬に

一方、2012年度に創設される[定期巡回・随時対応型訪問介護看護](以下、24時間訪問サービス)の骨格は、9月22日の給付費分科会で明らかになりました。今後増加する重度者の在宅生活の[限界点]を引き上げるため、短時間の巡回ケアを中心に、訪問介護と訪問看護の両方を提供するものです。主に要介護3以上の中重度者の利用を想定しています。
厚労省が示した報酬案と基準案は図2の通りです。報酬は、定期巡回と随時対応を含め、すべて包括払いにします。要介護度に応じて訪問介護と訪問看護のそれぞれに包括報酬を設定し、訪問看護が必要な利用者には、両方の報酬を算定する仕組みです。

 

報酬額は、同じ地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護(要介護3~5で月額2万3286~2万8120単位)を参考に、同程度の水準を設定する可能性があります。厚労省は24時間訪問サービスを[地域包括ケアを支える重要なサービスの一つ](老健局振興課)としており、高い報酬を期待する声も多いが、財源不足の中でどれだけ手厚い報酬を設定できるかは不透明です。
定期巡回の訪問介護スタッフの配置については、柔軟な人員配置を可能にするため、[必要な数以上]とされました。一方、随時対応については専らサービスを提供できる介護スタッフを1人以上確保する必要があります。

 

(以下の図1)

24時間訪問サービスを毎日提供する場合に必要な人数は、常動換算で42人以上(24時間X7日÷40時間)となります。これは現行の夜間対応型訪問介護と同じです。

 

看護職員については、利用者すべてに訪問看護が必要とはならないことから、[サービスの提供に必要な数以上]としました。ただし、現在の訪問看護サービスや49ページで述べる[複合型サービス]では、2.5人以上の看護職員の配置を求めています。24時間訪問サービスのみ看護職員が2.5人未満で訪問看護を実施できるとなると、これらのサービスとの整合性が取れなくなります。今後、24時間訪問サービスの看護師の人員配置にも、同様に2.5人以上の配置要件が盛り込まれる可能性は高いです。

2012年介護保険法 同時改定はこうなる!その1-全体動向について

介護報酬: 改定率はプラスマイナスゼロ巡る攻防。[処遇改善金]と地域区分変更が焦点

プラスマイナスゼロ近辺の攻防。これが10月末現在の、2012年度介護報酬改定の改定率に対する関係者のおおむね一致した見方です。しかし、一口に[ゼロ改定]といっても、その意味はみかたによって大きく異なります。介護職員処遇改善交付金と介護報酬における地域区分の見直しという、これまでない二つの要素が含まれているからです。

 

とりわけ影響が大きいのは処遇改善交付金の扱い。同交付金は介護職員の賃金の低さから深刻な人手不足に陥った状況を改善する目的で、政府が10兆円の[経済危機対策]の一環として、2009年度補正予算で財源を確保して始めたものです。介護職員の処遇改善を担保するため、職員の昇給・昇格の道筋などを示すキャリアパスを要件化し、従わない場合、支給額を減らす仕組みを投入したのも特徴です。

 

同交付金は2011年度末までの時限措置のため、2012年度以降も継続するかどうかは、来年度予算が編成される年末までに決める必要があります。
厚生労働省の2010年度介護従事者の処遇状況等調査によれば、同交付金の申請事業所では介護職員の月給が平均1万5000円増加。対象外の看護職員なども1万円アップしています。介護事業者の間では、2012年度以降も何らかの形で制度の継続を求める声が多いです。

 

交付金存続に財源の壁

介護職員の処遇改善策を存続させる場合、主に二つの方法があります。
一つは諸具改善交付金を継続するやり方。だが、現実は厳しいです。10月13日の社会保険審議会・介護封建部会で厚生労働省は、2012年度予算の概算要求に同交付金を盛り込んでいないことを説明しました。(図1)財源確保が難しいためです。

 

厚生労働省によると、第5期介護保険事業計画(2012 ~ 2014年度)において同交付金を継続した場合、必要な財源は単年度で1900億円。これを予算に組み込むと、財務省が定めた概算要求枠に収まらず不可能と厚生労働省は判断しました。
背景には東日本大震災の復興対策が最優先課題とされる中、それ以外の分野で巨額の予算措置を講じるのは難しいとの考えもありました。

 

もう一つは、同交付金に充てられた財源を介護報酬に組み込む方法です。介護報酬は事業者の収入に直結するため、経営者の判断で、同交付金の対象外だった看護職員などの処遇を改善する道も開けます。
だが、もともとほかの職種より介護職員の処遇が悪いことへの改善策として同交付金が始まったため、介護報酬に組み込む場合も介護職員のみ、処遇を改善する仕組みを担保したいのが厚生労働省の考え。そこで10月17日の社保審・介護給付費分科会で、介護報酬に組み込んだ場合の対応として[処遇改善加算](仮称)の新設を提案しました。(図2)


 

この加算は現行の処遇改善交付金と要件はほぼ同じだが、新しい内容が二つが加わっています。
一つ目は加算による収入のうち、介護職員の本給に組み込む割合を一定以上とすること。
二つ目は、2012年度以降に採用した介護職員の処遇は経験年度や実務能力を勘案する旨を給与規定で定めることです。
だが、これに対して委員からは[国家の労働市場に対する過剰な介入だ。国が賃金の決め方にまで踏み込むべきでない][行政が介入するなら、以前の措置制度と同じだ]などの反対意見が相次いだため、結論は出ませんでした。

 

報酬に組み込めば2%分必要に

介護報酬に組み込んだ場合、事業者の関心が高いのは改定率に与える影響です。厚生労働性は、改定率2%分の財源が必要になるとしています。つまり、処遇改善交付金を介護報酬に組み込んだうえでゼロ改定だった場合、実質マイナス2%の改定になります。
10月13日の介護保険部会では、厚生労働省は後述する[介護納付金]の総報酬割の導入などで新たな財源が確保できない限り、処遇改善は事業者の自主的な努力が求められるのではないか]と説明。
現時点で2%分の財源確保は事実上難しいとの認識を示しました。
理由としては、

① 社会保障と税の一体改革の成案では[マンパワー増強](介護職員の処遇改善)とセットで、重点化・効率化の検討が必要とされている
② 2011年介護事業経営実態監査で3年前に比べて介護保険サービス事業所の収支差率が軒並み改善した

その2点を挙げました。

 

介護納付金への総報酬割導入とは、40歳以上65歳未満の第2号被保険者が支払う介護保険料(介護納付金)の徴収方法の変更をさします。現行制度では被保険者の加入者数に応じて負担を決めているが、被保険者の総報酬額で決める形に改めるというものです。
10月31日の介護封建部会で厚生労働省は、総報酬割を3分の1導入する場合と完全に導入する場合の2案を示しました。3分の1実施の場合には2012年度に約430億円、完全実施なら約1300億円国庫負担が削減できる見込みです。
厚生労働省は同日の介護保険部会で、そのほかの財源確保策として、要支援者の利用者負担割合の引き上げ、ケアマネジメントへの利用者負担の導入、一定以上の所得者の利用者負担割合のアップ、介護保険施設の多床室における居住費の徴収、補足給付の範囲の厳格化などを提案しました。

 

処遇改善交付金の扱いと介護納付金の総報酬割導入などの新たな財源確保は、年末までに介護保険部会や給付費分科会が意見を取りまとめる予定です。
とはいえ、これらはあくまで厚生労働省の考えに沿ったもの。介護報酬改定と処遇改善交付金の扱いは、年末までに予算編成過程で対応することになっており、最終決定は政府・与党の役割です。民主党のある中堅議員は「財源は補正予算などで別途確保して交付金をプラスにするのが政治の力だ」と話しており、今後駆け引きが激化しそうです。

 

[その他]地域はマイナス改定も

改定率に影響を与える二つ目の要素は、地域区分の見直しです。介護報酬では、1単位の10円を基本とした上で人件費などの地域差を調整するため、地域区分を定めて割増率決めています。(図3) 

 

国家公務員の地域手当の区分に倣って5区分だったが、2006年に国家公務員の区分が7区分に変更。同時に国家公務員の報酬を一律4.8%下げて財源を捻出し、地域ごとに給付を調整しました。一方、介護報酬を5区分のままのため、今回の改訂では国家公務員の見直しの手法に沿って再編します。都市部の人件費などを適正に反省させます。
具体的には、現行の特甲地を三つに細分化して7区分化とします。(上記図3)この方向性は、給付費分科会で合意が得られているほか、民主党の厚生労働部門会議でも目立った反対意見は出ていません。

 

問題は、調整分の財源捻出に伴って報酬をどの程度引き下げる必要があるかです。厚生労働省は10月7日の給付費分科会で、全体の財源を増減させない[財政中立]を前提に2010年9月の介護保険事業状況報告を基に試算した結果を公表したが、調整率0.6%のマイナスとなりました。つまり、甲地やその他地域などは実質0.6%、乙地に至っては2.6%ものマイナス改定になります。

 

地域区分変更の影響はまだあります。地域によっては、現行の特甲地(10%)から見直し後は乙地(3%)に、一気に割増率が下がる場合などがあります。影響が多きため、厚生労働省は2012~2014年度は、地域区分が2区分以上、上下する場合には、原則として1区分だけの上下にとどめる経過措置を提案しました。だが、[マイナス0.6%になること自体を緩和すべき]など給付費分科会の委員から反対意見が出て、継続審査となりました。
つまり、処遇改善交付金と財政中立を前提にした地域区分見直しの両方を介護報酬に組み込んだ場合、単純計算でプラス2.6%を超える改定率が実現しないと、多くの介護事業者は実質的なマイナス改定を余儀なくされるわけです。
 
この点も最後政治者に委ねられます。前出の民主党議員は[地域区分見直しの厚生労働省の試算は財政中立前提の話。だが、0.6%以上のプラス改定にすれば問題はある程度解決する]と話します。だが、介護保険財政がひっ迫し、復興財源の確保も必要な状況で、2.6%を上回る「真水」のプラス改定が出来るのか。道のりは極めて険しいです。

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